10.11.2014

だれもが心を持っている

「ビジネスマンの父から息子への30通の手紙」という、カナダの製薬会社社長の書いた本が好きなのだが、その中にはこうある。
ひとかどの人物になるための条件は何か?第一に必要なことは、だれもが心を持っているという事実を悟ることだろう。自分で自分のなかに育てた、独特の、たったひとつしかない、ひとりひとりの心である。
最近このことをよくよく考えている。この一年あまり、暗い孤独の中に暮らしてきた。大衆を軽蔑し、神経質に社交を退け、文学や哲学に没頭した。その間、親切にしてくれる友人たちを拒絶した(同時に、女たちには拒絶された)。孤独にこそ智慧がある、真理があると信じていた。

しかし、最近は逆に、人びとの中に溶け込み、打ち解けようと思うようになった。きっかけはわからない。季節の移り変わりのようなものかもしれないし、年を取ったからかもしれない。寂しかったからではない。孤独から離れることはむしろ辛かった。とにかく、ぼくは以前よりずっと多く笑い、話すようになった。

孤独のどん底にいた経験は決して無駄ではなかったと思う。孤独は本当にいろいろなことを教えてくれた。もっとも徹底的に学んだことは、「人間は不幸だ」ということである。この世は苦痛に満ちているということである。これを知ったぼくはもはや過去のぼくではなくなった。今、生活の中でそうであるように、ひとびとと楽しく雑談していても、自分は孤独人なのだという感覚はぬぐえない。孤独で過ごす中にあった巨大な自意識は今も生きていて、静かにぼくを見守っている。

苦痛を知り、それから解脱した人には義務がある。それは、過去の自分のように苦痛にもがいている人に道を示唆することである。彼を絶望の淵からすくい上げるでもない。彼を癒やすわけでもない。ただ、明かりを与えてあげることだ。誠実な、優れた芸術はすべて道を照らすものであると思う。

「ビジネスマンの父から~」の続きを引用しておく。
君がこの事実を悟り、君の心を支配するのは君自身であること、そして君の心が君に与える力の大きさを理解するとき、君は初めて、ほんとうに君自身の仕事をすることができる。こうなったとき初めて、君は常にほかの人たちを見習い、他の人たちと同じ行動を取り、ほかの人たちとの助けを求めることをしなくなるだろう。君は基本的に、君自身を見つめるようになるだろう。

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