2.21.2015

自然と超自然

ソクラテスとプラトンに支配された二千年。

現代思想はソクラテスとプラトンによって支配されているのかもしれない。
ソクラテス以前のギリシャの思想家たちが考えていた『自然』は、「自然科学の対象にされるような一部の存在者、いわゆる外的・物質的自然を差すのではなく、日本語の『自然(じねん・しぜん)にもあるような『自ずからあるがままのあり方』『本来のあり方』という意味での自然(フェシス)を指しているらしい。

そうして、

「そこに、まったく異質なものの考え方、いわば超自然的な原理を設定し、それを拠点にしてすべてを考えていく超自然的な思考様式を持ち込んだのがプラトンなのだ。」 

と木田元が「反哲学史」で指摘している。なぜプラトンはイデア論的な思考様式を生みだしたのか?
「著者はプラトンがギリシア本来の考え方に逆らって「哲学」を編みださなければならなかった事情をアテネの没落とソクラテスの刑死という時代状況から説明している。自然の内なる生命力を肯定するギリシア土着の考え方にしたがう限り、ポリスのコントロールはできない。ポリスをコントロールし、ソクラテスの刑死のような衆愚政治に歯止めをかけるには世界を被造物ととらえるセム系の考え方に切り替える必要がある。」(KINOKUNIYA 書評空間「反哲学史」書評より)

これは優れた説明だと思う。プラトンはソクラテスの死を乗りこえるために、超自然的な哲学を生みだした。(ちなみにこれらの本を、ぼくは読んでいない。すべて中村隆一郎氏のブログ「私の演劇時評」からの引用である。)

西洋思想は非自然的といわれる。キリスト教においても、自然は人間がゆたかに暮らしていけるように神が創造したものであって、人間の所有物ではあれど、神的な要素は少ない。これはアニミズム的観点からはかけ離れている。

人間が自然的な思想から解放されたのは、ソクラテス―プラトン以後なのだ、と考えるといろいろなことが符合する。超自然的価値観は、プラトンから始まった。現代に至るまでの二千年の思想は、プラトンが生みだした。プラトンの系譜は、カントやヘーゲルにまで続いた。これに反発したのがニーチェからハイデガーにいたる「反哲学」であるというのが木田元の主張である(フロイトを加えてもいいかもしれない)。ところで、ニーチェやハイデガーは勝ったのだろうか。二千年のイデオロギーに勝利したのだろうか。

ときどきぼくは思うのだが、なぜいまもプラトンは読まれ続けているのだろうか。ソクラテス―プラトン―アリストテレスの思想を囓っておくことが、古くから一般的な教養だとされている。ひとびとは歴史学の興味もないのに、二千年以上前の思想を読み、驚嘆する。そこから現代にも生きる思想を見つける。

結局、それは、プラトンの生んだ教義、イデオロギーが、現代にも続いている証左ではないのか。二千年前もの思想が、いまだ克服されていないのである。それはキリスト教が現代の最大勢力であることと、無関係ではあるまい。

ニーチェが「神は死んだ」としながら、デュオニソスというギリシャ神話の神を持ち出したのは、ニーチェがアンチクリスト的な無神論を主張しただけではなくて、自然主義的アニミズムへの回帰を目指したからではないのか。

イデオロギーの戦争は二千年続いている。それは「自然と超自然の戦い」であった。このように二千年をひもといてみると、おもしろいかもしれない。

いろいろ調べていたら、永井均が似たような考えをツイートしていた。
一般に今日の自然主義を分析哲学の伝統からの逸脱として批判することは重要だろう。私はニーチェを超越論哲学の伝統からの逸脱として批判したことがあるが、本質的には同じこと。「神は死んだ(ニーチェもね)」という言に反して、ニーチェ(とその系譜の現代思想)と自然主義は実は同じ穴の貉だから。



木田元の「反哲学史」については、Masaaki Onoの書き抜きがけっこうよくまとめられていると思う。木田元、すごい人だなあ。

「反哲学史」は、あまりに評判がよいので、二年前くらいに買っておいたのだが、半分ほど読んで放置してしまっていた。いまは引っ越しの準備のため、すべての本が段ボールのなかなので、読み返すことができないでいる。

本はほとんど新居に持っていくことにした。ぼくは働きにいくのではない。本を読むために、田舎へ飛ぶのだ。これくらいの気概である。

本は、たいてい文庫本を買うようにしているが、それでも段ボール五箱くらいになった。昔読んだビジネス書やくだらない商業書はすべて捨てることにした。

あらかた詰めこんだら、信じられないくらい重たい。ボロアパートの床に穴が空きそうだ。この感じ、好きである。やはり、電子書籍は嫌いだ。紙が好きだ、と思う。

2 件のコメント:

  1. 私は読書の時間を確保するために転職しました。

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  2. すばらしいことだと思います。

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