4.05.2015

大型テレビをもつ奴隷

圧政とは何か、と考えてみると、人間を人間でなくしてしまうということ、これ以上の暴力的政策はないだろう。

すべての人間は本来的に自由であるし、その生を自分のためだけに行使する権利を持っている。しかし、そのような近代以降の理想的価値観は日本においては僅少だ。

本当は人間だったはずのぼくらは工業的製品と兵隊のハイブリッドに作り上げられる。

実際的には圧政と聞くと貧農からの搾取というようなわかりやすいモデルが想起されるが、これは圧政とは言えない。まだ人民が決起する可能性が残っているからだ。

もっとも恐ろしくまた危険な圧政は人々が搾取され行動を支配されているにも関わらず、そのことに思いもよらない世論が形成されることである。

我々はいい暮らしをしている、確かに理不尽なこともあるが、他の国に比べれば・・・。

教育やメディアによってこのような価値観が形成されると少数派、例えば「この国はおかしい。われわれは奴隷だ」と声をあげるような人々は侮蔑され攻撃され抹殺される。

それは無知な人間に「地球は丸い」と教えるようなものだからである。

実際のところ抑圧的な社会においては市民が警察になり憲兵になる。市民の分断が行われ、少数派の危険因子は抹殺されてゆく。それが町内会でありPTAである。

たしかに手枷足枷といった奴隷的な象徴は現代では見られないが、注意深く観察すればいたるところに鎖は見えてくる。

それは例えばある企業に勤務する人に明らかであり、優良企業にいる人々は精神の支配を、ブラック企業にいる人々は精神と肉体の全人的な隷属化を受けていると考えることができる。

ブラック企業に苦しむ人は、普通に考えれば「辞めれば良い」のであるが、その辞める自由は彼にあるのか。

現実には、彼がどれだけ血反吐を吐こうが、愚痴を吐こうが、その異常な奴隷的労働から解放されることはない。

法律的に考えれば彼の離職の自由は保証されているはずだが、しかし彼は「奴隷的環境」から抜け出すことが事実上「できない」。

誰にとっても奴隷であるよりは自由人でありたいものだ。だから、彼が自由意志で奴隷的環境に甘んじているのだ、と考えることはやめよう。世間には特殊な嗜好をもった人がいるが、ここでは一般論で話を進める。

それでは、何が彼を奴隷的環境に繋ぎとめるのだろう?

我々は「行為」と「結果」に着目し、動機、意志といった要素はいったん切り離すべきだ。

そうでなければ、すべてが自己責任になってしまう。生活保護も自己責任だし、ニートの急増も自己責任だ。そうではない。

言葉を変えれば貧困層と失業者が増えているのである。それは個人の問題ではなく社会の構造的問題であることは明らかだ。

失業者が増えている国において、「失業者が増えているのは、失業者が悪い」と断じるアホがどこにいるか。それがこの国ではたいへん多いのである。

この日本人の思考様式はまことに奴隷的である。奴隷は主人に歯向かわないのである。奴隷の屈折した攻撃衝動はどこに向かうか。同じ奴隷、それもより弱い奴隷である。

ここまで気の向くままに書いてきたが、ひとつ大きな疑問がある。

このような支配様式、奴隷が奴隷であることに満足するような支配は、近現代の産物なのだろうか?

もしかすれば、絵本に書かれるような圧政、直接的暴力と直接的搾取のネロ的な暴政は、イデオロギーのひとつではないかということだ。

ブラック企業に勤める人が、そのような人生を歩まねばならなかったように、中世の貧農たちは、それなりに自分の人生に満足していたのではないか。「われわれの人生は、そう悪いものではない」という世論が貧農の中にもあったのではないか。

ブラック企業の人が23時に退社するときのため息と、貧農の人びとが豆だけのスープを前にしたときのため息は、同じ種類のものではないか。

つまりぼくらの生活は憲法や民主主義によって変えられた要素は何もないのであり、人民はいまだ奴隷的な貧農なのではないか。

というようなことを考えたが、少し極端だな。今の個々人は、たしかに豊かであるからだ。昔は金持ちにしか買えなかった大型テレビも数万円で買えるのである。

「大型テレビを持つ奴隷」そんなものがありうるのだろうか?

ハクスレーの「すばらしい新世界」では、大衆は豊かだがすべてがコントロールされている。大衆は「幸福」である。何の不満もなく生きている。

完成された統治とはそのようなものかもしれない。だれもが幸福だが、決して人間的ではない大衆。

「俺はいい生活をしている。たしかに仕事は大変だけど、この国は治安がいいし、飯もうまいんだよ」

このような発言がネット上のいたるところにある。満足した奴隷というところか。


相変わらずよくまとまらなかった。


ああ、読書をしたいのに時間がない。体力もごっそり削られている。学生時代が懐かしくなる。一日に40pくらいしか読めない。仕事になれてゆけば、何とかなるだろうか。

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