6.15.2015

よい憂鬱、悪い憂鬱

昨日は、実に正しく、苦しんだ。久しぶりに苦しむことができた。

実は昨日は、街コンに行く予定だったのだが、湿気のせいか、髪型がうまく決まらず、気分も不安ないやな感じになってきたので、主催者にキャンセルを報告した。すると、キャンセル料が発生するといわれた。おそらく、数千円が請求されるのだろう。

このように、金は、するするとぼくの手元を抜け落ちていく。

ぼくは、バカみたいなことで金を使ってしまう。サイズの合わない靴を買ったり、絶対に着ないようなTシャツを買って、金を失う。バイクの鍵を出先でなくしたと思い込んで、鍵業者に頼んで、そのあとすぐ見つかって、出張費の五千円を払ったこともあった。

何にもならないようなことで、金を失っていく。

ぼくはお金は好きではないが、節約家だという自負がある。基本的には自炊だ。ギャンブルはしないし、高い物を買う気もない。最近はドラム式洗濯機を買ったけど、あれは就職記念だった。車は、まあ、中古の軽自動車だし・・・。

でも、お金が貯まらないものだ。ぼくはたぶん、お金に好かれてはいないのではないか、と思うときがある。実際、ぼくは、金のために作られた世界が、全部嫌いだ。

とにかく、失った数千円と、曇天と湿度100%、実に不快な天気が、ぼくを憂鬱に落としこんでくれた。

でも、それはよい憂鬱だった。



よい憂鬱、悪い憂鬱。

ヴェイユは「不幸」と「苦痛」を使い分けていて、苦痛は神に近づくための肯定的刺激であるのに対し、不幸は感覚を麻痺させたり、迷妄に陥らせるようなものとして、否定的に書かれている。

ぼくからすれば、「否」の感情を持つのであれば、川のすべてが海に導かれるように、真理に到達できるように思っていたが、そうでもないのかもしれない。人間の精神を殺してしまうような否=不幸は、たしかに存在する。

「嘔吐」の一節を思い出した。
私は彼女がときには、歌いやめるとすぐぶつぶつ呟くことや単調なその苦悩から解放されて、思い切り苦しみ、絶望のなかに沈湎することを望まないのか考えてみる。しかしとにかくそれは不可能だろう。彼女はがんじがらめになっているのだ。(「嘔吐」サルトル)

がんじがらめ――全面的な苦痛のなかに飛び込むこと、不幸はそれを絶対に許さない、ということか。

「単調な」不幸は、真の意味で、もっとも不幸である。それは、苦しみだが、真理からは逆に離れる。苦しみ損という奴だ。苦しむにも、コツがある。
苦痛もある段階に達すると、世界がぽろりと落ちてしまう。だが、そのあとでは、安らぎがやってくる。それからまた、激痛がおこるとしても、次にはまた、安らぎがやってくる。もしこのことを知っていれば、この段階がかえって次にくる安らぎへの期待となる。その結果、世界との接触もたち切られずにすむ。(「重力と恩寵」ヴェイユ)

このシモーヌ・ヴェイユの一説は、「成功と不成功を平等のものと見て、諸々の行為をせよ。」という、ギーターの奥義を彷彿とさせる。


ぼくは世界から、離れたり戻ったりだ。だから、硬直した現実的な社会では、まこと生きづらい。今日からまた、労働の場では、浮遊感に苦しみにながら仕事をするだろう。

浮遊感とは、「浮く」ことである。集団から「浮く」ことは、ぼくにとって珍しいことではない。実際に、精神は、あちこちに浮いてしまっているのだ。そうだから、他者が「あいつは浮いている」と指摘することは、誤りではない。

彼らが大真面目に取り組んでいるものが、ぼくにとってはまるで興味がわかない。退屈であくびが出ることもあるし、やりたくなくて、悲鳴をあげそうになるときもある。

ぼくと職場をつなぐコードは、ひとつ「賃金」であって、もし金のもつ拘束力がなければ、ぼくは数秒も待たずに、職場との関係を断絶するだろう。会社のために働く、という認識はない。

経営者と労働者は、ただ金という臍帯でのみ繋がれる。いくら、家族的繋がりとか、助け合いとか、そういう「善意」でつなげたところで、そんなものはぼくにとってないも同然だ。



話が散漫になるが、最近マクドナルドの外人社長はやっと、日本が合理主義ではなく「善意」で統治されていると気づいたらしい。当然、ビジネスも善意が支配する。

そうだから、「子ども―母親」という絶対善に近いつながりを、商品に投影したようだ。Baby in carという不可解な英語。善性の主張。いまさら遅いという気がするけど。

3 件のコメント:

  1. 「憂鬱」に違いがあるなんて知らなかった…
    「よい憂鬱」しかしらない者が「悪い憂鬱」の苦しみなんて、わかるわけないよね。
    なんだか恥ずかしくなりました。フローレン

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  2. よい憂鬱しか知らない人はいません。世の中、悪いものの方がはるかに多いからです。

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  3. ありがとう。難しいけど、少し安心しました。フローレン

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