10.24.2015

コミュ障は考える

たとえばコミュニケーションスキルやライフハックといった時代の寵児的な浮ついた言葉の数々は、ニーチェに言わせると、ソクラテス流儀の楽観主義ということができるだろう。

私もこれらの事象に何か新しいものを感じ(なぜなら私の人間関係も生活もボロボロだったから)、少し読んでみて、すぐさま失望した。その理由は、結局何も役に立たなかったということでもあるし、鼻持ちならない楽観主義にムカついたということもある。

コミュニケーションスキル 人と人の間でコミュニケーションをとる方法・手法・テクニックを理論付けし、検証を行い技術または知識としてまとめたもの。
ライフハック 効率良く仕事をこなし、高い生産性を上げ、人生のクオリティを高めるための工夫。 

結局のところ、両者の命題とは「他者との交わり方」と「よく生きる」という問題である。

私は、これらの問題が表面的な理論によって解決するようには思えない。まずもってコミュニケーションスキルなんてものが身につくには経験が必要だし、理論についても、そう簡単に結論が出るものではない(少なくともビジネス書書いてる連中には無理)。

「コミュニケーションスキル」と聞くと、人間関係は、まるでプラモデルの組み立てのように構築されるようである。「ここで笑顔に」「ここで冗談を」「ここで同情の言葉を」という指示通りに動いていけば、良好な関係を築けると思っている。

しかし、我々にとって他者とはブラックボックスである。謎でしかない。したがって他者との関係も、なぜだかわからないが維持され、なぜだかわからないが破綻する、我々の認識を越えた不気味なものでしかない。生活についても同様である。よき生活とは何か?はソクラテスに始まりいまだ解決していない。

こうした不気味なものに対しては、すぐさま(見せかけの)解決策が用意される。こうすればあなたは他者との関係がよくなりますよ――。少し前は宗教がこの役割を果たしたが、これはマシだった(隣人を愛せ)。いまではずっと軽薄な、エセ科学(エセ心理学)が人びとの舵をとっている(一冊1800円くらいで)。

そういうわけで、

人間関係は克服されたのだ!

という黄色い歓声が聞こえてくる、些末なダニのような人々が、ぴょんぴょん飛び跳ねているのが遠くに見える。

こういう人々は、すぐさま現実に打ちのめされる。なんだ、指示通りにやってもうまくいかないじゃないか!そうして、彼らはもっと研究に没頭する。よきコミュニケーションの技能を身につけようとする。

結局彼らには永遠に「よき認識」がないのだ。



実のところ、私はコミュ力を無理矢理高めようとしている滑稽な人間を見たことがある。滑稽というより哀れだったかもしれない。私も人に気にいられようと努力したことがあったが、10代のうちに辞めてよかったと思う。

やたら笑顔になったり、世話をやいたりして、虎視眈々と「関係構築」を狙ってくる人間はうっとおしいし、うさん臭い。とくに私は、饒舌な人間と笑顔がぴたりとはまったような人間は、警戒を緩めないことにしている。

私もいい大人だから、相応の「対人スキル」を持っている。自己流の処世術である。それは「人に好かれたいと思わない」ことである。これをバカな人間は、「人に嫌われるようなことをするのか」と思うかもしれないが、そうではない。

結局、相手に執着するとよいことにならない。他人と距離をとること、自分を受け渡さず、他者を取り込もうとしない――良い関係はそういうところにあるだろう。

もしも、他人と距離が取れずにギクシャクするのであれば、そのような環境をまず見直すべきである。たいていの人間関係のトラブルは、距離が近すぎるのが問題なのである。

2 件のコメント:

  1. 社会的排除とは・・・社会的な統合とアイデンティティの構成要素となる実践と権利から個人や集団が排除されていくメカニズム、あるいは社会的な交流への参加から個人や集団が排除されていくメカニズムのこと。すなわち、社会的排除とは、物質的・金銭的欠如のみならず、居住、教育、保健、社会、サービス、就労などの多次元の領域において個人が排除され、社会的交流や社会参加さえも阻まれ、徐々に社会の周縁に追いやられていくことを指す。(欧州委員会)だそうです。
     社会にはその構成要因としては不適応という対象が一定数存在するわけですが、社会的包摂の観点からすれば、それらの「弱さ」を分析し、受け入れる体制をとらなければ社会としての強さが発揮されないというものです。それに反して、「コミュニケーション障害」や「コミュニケーションスキル」というフレーズは一元的なコミュニケーションの方向づけを強化・称揚し、不適応の度合をより強化するような感じがして、見ていると不快な気持ちになることがあります。そんなものや意識が蔓延る社会だから先進国のなかでも自殺率が高く、労働環境や条件が劣悪なのだろうと思います。

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  2. >やたら笑顔になったり、世話をやいたりして、虎視眈々と「関係構築」を狙ってくる人間はうっとおしいし、うさん臭い。

    ほんとその通り(笑)私も、コミュニケーションの意味を履き違えた輩が使う「コミュニケーションスキル」って言葉には反吐が出る。ところで、コミュニケーションについてのウィキペディアの記述、なかなか面白いよ。フローレン

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