1.12.2016

職場に警察がきた話①

警察に捕まった。

まさか、この年になって取り調べを受けるとは思わなかった。

職場で働いていると、私服の男性がふたり。見慣れない顔だ。私に用だという。五分だけいいですか、と言われ承諾すると外へ連れていかれる。覆面パトカーが止まっている。刑事ふたりは前席に。私は後部座席に。しっかり鍵もかけられる。

唐突に、強圧的な尋問を受ける。「何したかわかってますね」と。私は突然のことで、わからないと答える。私は、あまり遵法精神がないので(なにせバカらしい法律が多すぎる)、軽犯罪くらいならいくらでもしている。

「交通違反ですか?」と聞いてみる。違うようだ。私はバイクであちこち走っているので、軽(から中)度の交通違反くらいならいくらでもやっている。とはいっても常識の範囲内だから、わざわざ刑事がくるほどのことはしていないはずだ。

私が煮え切らない答えをしていると、突然刑事が怒鳴りだす。「あんたが正直に言わないつもりなら、こっちにも手段があるんだぞ」「正直に言え」と言ったふうに。私は、混乱する。本当にわからないからだ。私が思い出そうと努力しているのに、刑事がぎゃーぎゃー喚くので、思考が定まらない。「思い出すと言っているだろう、静かにしてください」と少しきつめに言うと、鳴りやんだ。いったいこいつらはいきなり職場に来て何様なんだ。

それで、ようやく話がわかってきた。刑事たちは、威圧的に怒鳴りながらも、さりげなく細かいヒントを与えてくれたので、ようやく道筋ができた。

ようは、私がバイクに乗っているとき、幅寄せしてきた車のミラーを砕いたことだった。



これは、去年の10月くらいになる。私が田舎道の二車線道路をツーリングしていたときのこと。前には軽トラ、その先にも数台。すこし渋滞していた。速度は制限速度+5kmくらい。

私は別段急く用事もないので、のんびり軽トラの後ろについていた。気分のよいツーリングだった。すると、後方からかなりの勢いで走ってくる中型トラックがあった。私は、当然だが、トラックが私のうしろに続くものと思い、そのまま軽トラの後ろを走っていた。

すると、トラックは加速し、私の横を並走してくる。私は驚き、クラクションを鳴らす。危険極まりない。対向車がきたらどうするのか。そもそも、前は渋滞しているのだし、私だけを抜く意味もわからない。

こういう輩を、私は心底嫌いなので、対抗してしまった。それが悪かったといえば悪かったのだが……。でも、この段階で私に非はなかったはずだ。

1分ほど、並走した状態が続く。軽トラの後ろで、二台が並走している形。ひどく長い時間だ。トラックは、次第に幅寄せしてくる。ついには、左方のガードレールとの間は、1mほどしかなくなった。途中なんどか路上の電柱に当たりそうになり、寸前で避けた。私は死ぬ思いをした。私はその間ずっとクラクションを鳴らし続けている。トラックは余計に幅寄せをしてくる。

私は確信した。このトラックは私を殺したいのに違いない。

そのときに、私の右前方にトラックのミラーがあった。私はそれを殴った。我慢の限界だった。恐怖よりも、怒りが強かった。ミラーは派手な音をたてて割れた。それで、トラックを追い抜き、私は去った。

「汝の権利を踏みにじった他人をして、処罰を免れて恬然たらしむることなかれ」とカントは言った。



そのあと、そのトラックの運転手が被害届を出したらしい。

私が思い出せないのも当然といえば当然で、私は自分が悪いという認識がなかったのだ。それどころか、自分が正しいことをしたという感覚すらあった。正直いって、よくもトラック側が被害届を出せたものだと思う……。まあ、被害届を出したのはドライバーではなく運送会社の重役だそうだから、紆余曲折あったのかもしれないが。

ともあれ、私の罪状は「器物損壊」ということになる。だけれど、相手が告訴しないというので、民事で解決ということになるようだ。交通事故と同じ示談。これで前科がつかなくて済む。ミラーの修理代を払って、おしまいとのこと。



警察の人びとが私を凶悪犯のように扱うのも当然で、被害者側は私が追い抜きざまにミラーを叩き割ったとしか伝えていなかったらしい。私はそんなバカなことはしない。

もちろん、我ながらミラーを叩き割るという行為は軽率だったと思う。ただ、考えてみれば、相手がトラックで私をバイクごとミンチにしようと思っているのと、私がミラーを叩き割るのと、どちらが狂気的だろうか?私はいまでも、自分があまり悪いことをしたと思ってはいない。下手すれば私は殺されていたのだから。

それでも職業の必要上、刑事告訴されては困る。私は自分が正しいとは思っているが、そういう事情を同僚も雇い主も理解しないことを知っている。それが日本社会だ。だから、示談で済ませることにした。

相手方が私を告訴するというのなら、私も彼らを相手取って告訴しても良いと思う。が、ムキになってもしょうがない。

警察のひとも、最後には事情を把握したようだ。調書をとると、あとはしばし雑談。仕事やバイクの話をする。最後には、「気持ちはわからないでもないが、手を出せばこういう面倒なことになる。次からは話し合いをしなさい」というような説教で終わった。それでも私は、やはり警察は嫌いだと思った。容疑者というだけの初対面の人間に、怒声を浴びせかけるというのは、尋常ではない。気の弱い人間は、自分の罪でなくても、ついには認めてしまうだろう。そのような迫力はあった。警察マフィアという言葉が頭に浮かぶ。

示談の電話を被害者側(被害届をだした重役)にかけてみると、わりと話の通じる人だった。どこまで正しい情報がいっているかわからないが。また、「いくらカッとなっても、手を出してはいけない」というお説教。でも、あんがい朗らかな雰囲気だ。ミラーは、2万円程度でなんとかなるとのこと。これぐらいで済むなら、良いのかもしれないが……。

徹底的に、抗戦してやりたいと思う気持ちもある。お前らが悪いのに、なんで俺が金を払わなければならないのだ。ふざけた運転をするな。ミラー一本で済んでよかっただろう。と、言ってやりたい気持ちもある。

しかし、私も守るべき生活がある。妥協点が必要かもしれない。私はこんなことに構っていられない。今年は、金を貯めねばならないし、海外旅行の準備もせねばらない。

まあ、いい経験をしたと思う。上の私の記述を読んで、私を犯罪者とか、精神異常者とか、(あるいは日和見主義者だとか)勝手に思っていただいてかまわない。私は経験と、自分の思っていること・感じていることを正直に述べたまでだ。

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