6.18.2016

酒と涙と

昨日は抑鬱のような気分に襲われ沈みこみそうだったが、Sが家に来ることになっていたので一緒に料理を食べた。少しぎくしゃくした。私はだれとも会いたくない気分だったし、風邪をひいたように頭がはたらかなかった。ゆえに酒をのんで、だまり、不快そうな顔をしていた。

Sは会社の後輩なのだが、自殺未遂で職場から消えたホスト上司とも仲が良かった。Sはホスト上司と同様、いろいろ気がつく人間であり、職場の人間にたびたびカウンセラーじみたことをしている。そうしてそれが下手な心理学者よりもうまい。こういう人間を見ると精神医学者とは何のためにあるのかと思う。ひとの心をこねくり回してあれこれ説明して患者を説得する。しかしほんとうのところひとりの理解ある人間こそが必要なのである。寛容を失った社会でひとが病気になるのであればそのひとに必要なものはまず愛情だろう。個人の心の障害はほとんど社会構造の問題に還元できるように思われる。

ともあれひとしきり酒を飲んでホスト上司の話に及ぶと私は不意に涙が止まらなくなった。酒のせいかもしれないがそれにしても尋常ではない涙が出た。まあたびたびこういうことがあるのだが、それにしても四月にSと会ってからはあまり泣くこともなかった。ホスト上司が消えて二ヶ月経つのであり別に悲しいのではなかった。まあ私も疲れていたのかもしれない。

ひとの前で泣くのは、本当にひさしぶりだったが、Sは私をそっとしておいてくれた。そうして私はみっともないことに酔い潰れた。何度かトイレで戻した。Sは私に胃薬を飲ませ寝かしつけた。そうして料理の後を掃除して冷蔵庫を整えテーブルを拭き電気を消して、帰っていった。

Sは何度か私にセクシュアルなメッセージを送っていたように思う。それは言外のものもあるし暗喩としてのメッセージもあった。男と女がふたりで家にあれば、そういう行為に及ぶのが自然かもしれない。女にも当然性欲はある。Sに性的魅力がないわけではないし、たまに欲情する自分を認めることがある。ただ私はそういう行為にあまり自信がなかった。またSが本当に私を求めているのか自信がない。

Sは興味深い人間である。人間の心理をよく捉えている。私の心を丁寧にほぐして、整えてくれる。私を自由に遊ばせてくれるが、間違った方向に行こうとすれば、しっかりとつなぎとめる。私は彼女を、女のなかの女であるように思う。まあ別段、彼女は優れて美人だとか知的レベルが高いというわけではない。少なくとも言えることは、他人に対する共感能力がずば抜けている。一種の霊感のようなものかもしれない。彼女の女性的なまなざしを考えると、いままで学んできた哲学や科学が、いったいどのようなものだったかと考える。男の築き上げた世界は児戯のように感じる。しょせんは男は女に勝てない、といったところだろうか。

1 件のコメント:

  1. 自信なんてなくていいよ。何も考えず、本能のままに、ただ彼女に甘えればいい。大丈夫!

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