8.20.2016

神経症の病理

病気にかかったのはあなたの責任ではないが、現在病気を治すのはあなたの責任です。あなたが私にはできませんと言ったら、あなたは自分をのけ者にしているのです。身体がどこもこわれていないかぎり、他の普通の人ができることは何でもできるのです(アブラハム・M・ロウ)
 神経症のcriticalな部分について、いろいろ考えていた。その根本原因は、神経症者の未熟さ、具体的には自分の内的な問題から目を逸らそうとすることにあるのではないかと思う。

「この苦しみはだれにも理解できない」というのが神経症の苦しみであり、その孤独感とあいまって絶望的につらい症状ではある。神経症者であればだれでも人生に絶望するような時間を味わっていることだと思う。そうして絶望に陥らせた「神経症」に執着し、そのことによって余計に神経症が悪化する。この絶望と執着のサイクルとが、神経症を泥沼化させる。

自分の苦しみは世間一般の苦しみとかけ離れていると独断し、孤独にひきこもり、他者を拒絶し、あたりまえの価値観を受け入れられなくなる。つまり、世間のひとびとが仕事や学業の困難に立ち向かい異性との関係に悩んでいるようなときに、神経症者は神経症を治そうとあらゆる努力を試みているのである。神経症者は、神経症の問題がとりあえず片付かなければ、恋愛や仕事のような「本来なすべき事柄」に真剣になれなくなると考えている。

実のところ神経症者は神経症に甘えているのであり、神経症を克服すべきだとは思っていない。ここが神経症の問題の核心部分だ。神経症者は治療をこころから熱望しているように見えるし、彼らも自分でだれよりも救いを求めていると思っている。人生を破綻させたこの病を、一刻も早くやっつけなければ。

しかし彼らは、あまりに長い時間を神経症に費やしてしまった。さらに彼らは人生の短くない間のさまざまな大問題から、目を逸らして生きねばならなかった。もちろん彼らはそれらの原因を、神経症のせいにしてきた。……まあ神経症者が人生のあらゆる失敗や不満や憎悪を神経症に向ける技術は芸術的でさえある。

そうだから、彼らがなんらかの「治療法」によって神経症を克服したとすれば、今度はそういった大問題がふりかかってくる。人間関係のこと、仕事のこと、ほったらかしにしてきた夢。

それら大問題は、けっして容易ならざる問題である。というのも、神経症はいくら複雑だろうと個人の内面的な問題でおさまるのであるが、こういった「本来の問題」というのは、ひとと関わること、社会とかかわることにあるのである。

ここまでくれば、神経症者の内的な問題面が見えてくる。単純に言ってしまえば、神経症者は社会や他人と関わることを恐れているのである。だから個人的・内面的な領域を出ない神経症に執着し、拘泥するのである。

俺の神経症は――と言う人があるだろう。俺の神経症は相手の眼が見れないという症状だ。人と対面すると赤面するというものだ。だから対人的な問題に悩んでいるのだ。そんなことはわかっている、と。

実際のところ、赤面しようが目を合わせなかろうが些末な問題だ。むろんその些末な問題に病的に執着するのが神経症というものであり、「そのせいで社会的な関係を構築できない」と対人恐怖的な神経症者は言うのであるが、何のことはない、彼ら自身が「社会的関係を自分からぶち壊したい」と願っているのである。

目の動きも、赤面も、しょせんは自分の肉体的な変化であり、「これさえよくなれば他人とうまくやっていけるのになあ」と、「自分の個人的な欠点」にのみ目を向けようとする。だから結局「他者」や「社会」といったものに背を向け、自分の問題だけ扱っていたいのである。この逃避と独断のプロセスが、神経症を持続させる基本的な原理である。

神経症者に他者は存在しないし、自分と相手の関係に目を向けることもない。彼らはそうした考えを抹殺してしまう。それは「厄介ごと」で「手に負えない」と内心では思っている。神経症者はめんどうなことを投げ出してしまう子どもなのである。神経症者は社会的な事柄から逃避してきたため、精神的に未熟だ。そうして潜在的に抱え込んでいる人生の課題は、膨大な量である。そこから動けないジレンマが、神経症者を釘付けにする。時間が経てば経つほど、余計に状況が悪くなる。神経症は地獄の苦しみだと言うが、これは事実である。

実際のところ、人生の充足感は社会や他者との関わりからしか得られない。だから神経症である以上、人生は空疎になる一方だ。

まずは自分の未熟さを自覚すること。神経症者が逃避していた間に蓄積した人生の大問題は、徐々に片付けていくしかない。足元から少しずつ、というわけであり、たとえば森田療法の作業療法が有効なのはこの理由によるのである。神経症者に必要なのは、少しずつでいいから、問題を片付けていこうという気持ちである。私はそのように考える。


長くなったのでここまで。神経症が改善傾向にあるので、ついでに酒もやめてみようと思っている。

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