9.19.2016

最低なおじさん

あいかわらず……自分の人格の問題を考えていると……。私は本当に価値がないのではないかと思われる。私は、自分の執着や、エゴを、脱することができない。罠から抜けたら、また罠だ。こんな自分だから、私はSに見放されているということを、十分理解している。しかし、すべてあとから気づくことばかりで、まったくダメだ。私は、Sを傷つけているし、Sを苛立たせるし、Sにしてみれば私は、目の開いていない子どもそのものだ。

自分の人格は、なぜこんなにも歪になってしまったのか、考えていると、ほとんど狂おしいような、涙をもよおすような、何もかも台無しになってしまった、そうして、もう手遅れなのではないかと考えてしまう。私のゆがんだ歯車は戻るのだろうか?壊すことは簡単だが、治すことは大変だ。どんなことでも。たいてい治せないまま、うっちゃってしまうことがほとんどだ。

「未熟でもいいじゃないか」とひとは言うけど、そんなことはない。未熟さに肯定的側面を見つけようという気持ちはわかる。世界にひとつだけの花だとか、個性だとか、私が子どもの頃よく聞かされたものだ。ただ人格的な成熟とは、個性をなくしていく方向にある。成熟した人格はゆがみなく、真円のように整っているものだ。もちろん、世間的に見れば成熟したひとは世間では稀だから、強烈な個性を持っているように見える。だからといって未熟さを個性として肯定することは誤りである。

精神病は、ほとんど人格の未熟さによって生まれる。少なくとも神経症についてはそういうことができる。私はあの神経症に悩んでいた、アルコールに溺れていた十年のことを考えて、とてもあのような時代に戻りたいとは思わない。霧のなかにいるような気分だった。私は、生きているのか死んでいるのかわからなかった。おそろしい孤独と苦痛の時代だった。

自己への執着を離れたいと思う。私は自分のことしか考えていない。Sの気持ちなど、どうでもよいのだ。私はSが自分のためになにかをしてくれることばかり期待している。どうしてこうなってしまったのか?家庭が崩壊気味だったせいか?Sの家庭は、理想的なものだ。家族一丸となって、大いに楽しみ、大いに苦しみを克服している。幸福な……というか、健全な家庭とは、こういうものだったのだ。私の家庭は、てんでバラバラだ。未熟な人間が、人生の苦しみも楽しみも遠ざけて、もそもそと陰気にうごめいている。人生をあきらめている。なんて惨めなことだろう。醜い家庭だろう。

Sに連絡したのも、やはりまずかったのだと思う。「会いたい人間に会いたいと言って何が悪いのか」という人がある。これは一般論としてはそうなのだが、私とSとの関係にはあてはまらない。私がSに会いたいと言うときは、「私をはやく救い出せ」と命令しているのだ。「私の傷をいやせ」「私の心の空隙を埋めろ」と、子どものように与えられることばかり望んでいるのだ。初めの何回かは、救うこともしてくれる。ただSは、もう与えることに意味を感じず、うんざりしたのだから、さらに追求することは禁忌だった。

私が人的に成熟しSに与えられるようになるまでは、Sと対等の立場になるまでは、けっして連絡を取ってはいけなかったのだ。私ができる最良の選択は、Sからの連絡を待つことだった。私が人格的に成熟してゆけば、人づてにでもそれを知り、Sは蒔いた種の実りを確認するように、自然に私に会いにくるはずだった。それがどれだけ先のことかはわからないが、じっと耐えるべきだったのだ。Sとの関係を保つためには、それだけしか可能性がなかった。私は酒を辞めたし、神経症も劇的に改善したから、もっと自分を高めてゆけばよかった。それが少し抑鬱気味になって、Sにまた助けを求めた。安易な気持ちでだ。いまでは、関係性はほとんど断たれてしまった。愚かなことをした。



私はSの孤独を推測して、悲しい気持ちになる。とうの私がまた、Sを失望させ、孤独へ追いやったのだ。あれほど成熟した人格者に、対等なパートナーが現れるのだろうか?ほとんど想像がつかない。彼女はつねに腕のよい医師であり、まわりの人間がすべて病人に見えているに違いない。

私は、Sに治療された。Sは私を劇的に治療した。それなのに、快復の過程でちょっとつまづくと、病気のままでいさせてくれ、と懇願するような真似をした。このことほど、医師を失望させることはない。

私は、エゴを脱するために、いろいろ考えている。人格を向上させたい。ひいては、霊性を高めること。それしか、幸福になる道はない。とは言っても、近道はないのだから、極めて小さなことから始めなければならない。形式的な儀式に意味はない。部屋の掃除をすること……。他人のためになにかをすること……。仕事に集中すること……。

少なくとも、私には道がある……。この道が、私を救ってくれる。私は最低でありどん底だが、私の爆発しそうなエネルギーが自分を殺しにかかる前に、この道が、行為へと導いてくれる。


1 件のコメント:

  1. あなたがいまそう思うのなら、それはそれで良いと思います。私も恋愛下手だから、その苦しみはよくわかります。
    苦しみやどん底を感じる状況下においても、いつもなんだかんだで這い上がろうとする。あなたのそういうとこが一番好きです。
    必ず良い方向へ「なるようになる」のだから、自分を信じて、とりあえず今は別の方向へエネルギーを注いでいれば良いと思います。

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